推しデザイナー語りその2「フランツ・ベノ・デロンジェ」
こんばんは、大佐です。今回は「推しデザイナーシリーズ」の第2弾として「フランツ・ベノ・デロンジェ」のお話をしたいと思います。
彼は表記ぶれの大きなデザイナーですが、今回はボドゲーマ採用の呼称「デロンジェ」で統一することにします。
デロンジェは代表作として『トランスアメリカ』が真っ先に挙がりますね。次に有名なのは処女作である『ビッグシティ』でしょうか?
『ビッグシティ』は古参ゲーマーの間でコンポーネント良し、ゲーム性良しと評判の高い作品で、20年の時を経て再販されたという経緯があります。
今回の記事は上記3作はもちろん、かなりの数のデロンジュ作品をプレイした、マニアの目線から書いています。よろしければ是非最後までお楽しみください!それでは参りましょう。
僕はクニツィアマニアではなくデロンジュマニアだと思っています。世間の扱いはけがわさんの弟子的なポジションみたいです。まあこちらも光栄なことですが(笑)。
【目次】
- デロンジェとの出会い
- デロンジェのゲームの特徴
- 1.『ビッグシティ』
- 2.『コンテナ』
- 3.『トランスアメリカ』
- 4.『フィヨルド』
- 5.『ゴールドブロイ』
- 6.『画商』
- 7.『マニラ』
- 自分的お勧めゲーム
- 50歳の若さにしてこの世を去る
- 今日のまとめ
デロンジェとの出会い
一番最初に彼の作品を知ったのは『ビッグシティ』です。現トリックプレイの店長をされているSeekerさんと何度か遊ぶ機会があり、その時に遊ばせてもらったタイトルの1つです。
その後けがわさん、Area51さんと僕のゲーム価値観に大きな影響を与える人達とも出会います。デロンジェの作品は彼ら2人の評価も良い方でした。また渋いゲームを好む通の方の評価がとても高いデザイナーでした。
個人的に『ビッグシティ』がとても面白く感じたので、そこから掘り下げを行っていきました。代表作『トランスアメリカ』はもちろん、『マニラ』、『コンテナ』のような有名作はもちろん。『画商』、『決算日』のようなマイナー作品までプレイするほど彼の作品は深堀りしました。
デロンジェのゲームの特徴
これね。非常に難しいデザイナーだと思います。ゲームデザインはテーマに合わせて変幻自在というか、固有のデザイン方針はあまり持たれていないのでは?とも思います。
なので固有の共通項を無理やり探し出すよりも、個々のゲームの特徴を解説していく方が有益性の高い内容になるかと思います。今回は以下のゲームを扱います。
1.『ビッグシティ』
2.『コンテナ』
3.『トランスアメリカ』
4.『フィヨルド』
5.『ゴールドブロイ』
6.『画商』
7.『マニラ』
この7つに絞っていこうと思います。ちなみに他にプレイしたことがあるのは『決算日』、『ヘラス』、『ドスリオス』、『ザンジバル』なども遊びました。
ボリュームが凄い内容になると思いますが、気になるゲームだけピックアップして読んで頂ければと思います。それでは個別解説にいきましょう。
1.『ビッグシティ』
処女作にして完成度の高い作品をデロンジュは世に送り放ちます。それが本作『ビッグシティ』です。
ゲーム性としては共通のボードで行うシムシティ的な都市建設です。区画番号カードを使って建設するのですが、隣接する建物が建設条件に関わるので甘い手を打つわけにはいきません。
20年の時を経て待望の再販!
コンポーネントの素晴らしさから長らく再販を求める声がありました。10年ごろ前にもヴァリーゲームズから再販されるという噂はありましたが、結局20年の時を経てようやくマーキュリーゲームズから再販されました!
とはいえ、価格が高すぎて売れ行きが芳しくないのでしょうか?駿河屋では1万円を切って新品を販売していますね。豪華版が欲しい人には買いの時期が来ているのではないかと思います。
旧版?新版?どっちがお勧め?
難しい質問ですね。旧版は軽量で持ち運びに優れます。場新版は豪華だが重量が凄く、持ち運びや遊ぶ際の場所も広いスペースを必要とします。
機能面で言えば間違いなく旧版一択です。ですが、新版は旧版になかった拡張セットに対応しているという点で差があります。旧版と拡張セットを混ぜて遊ぶのは新版の建設物が大きすぎるので、ボードの大きさが合わないのでは?と思います。
2.『コンテナ』
2番手は『コンテナ』です。物流ゲームの傑作と名高い本作は、2007年にリリースされた作品です。物流をうまくゲームに抽象化して落とし込んであり、ボード間を船がコンテナを積載して行き来する様はとても絵になります。
ゲーム性としてはお金が勝利点なので上手く稼ぐゲームです。5色あるコンテナの価値(売却価格)が全員で異なるので、そこで競りの入札に面白いほど価値観の差が出る不思議なゲームと言えます。
2時間級ゲームなのに基本となるルールはとてもシンプルながら、いろいろやれることが多いです。5人集まることがあれば一度は遊んでみてほしいゲームです。
新版?旧版?どちらが良いの?
難しい質問です。旧版は船が落とすと壊れそうで強度が心配です。持ち運びの際には注意が必要かもしれません。でも重量は軽いので持ち運びに優れてはいます。
新版は非常に重たいです。その分船が頑丈になった感じがあります。コンポーネントに力を入れた分、お値段・重さともに凄いことになりました。
個人的にはどちらでもよいと思います。旧版はプレミア価格で価格差は新版と差異はなさそうに思います。コンポーネントと重量で天秤にかけて自分に合った方を選べばよいかと思います。
3.『トランスアメリカ』
デロンジェで一番有名な作品といえばこれかと思います。線路は全員共通で、自分の都市カードを全てつながるよう路線配置することを狙うゲームです。
これ以上にシンプルな鉄道ゲームを僕は知らないです。またまた凄いゲームをデザインしたといえます。
ゲーム性としては他人の動きを上手く予想し、他人を上手く利用しできるだけ少ない労力で、線路を指定の区間でつなぐゲームです。ざくっと言ってしまえば、心理戦ですね。
どのエディションがお勧め?
拡張セット『ダイヤの乱れ』は必須レベルでほしい拡張セットです。旧版をあえて買うと付属しないリスクがあります。この拡張セットは「上級ルール」レベルで必須の要素だと思います。是非とも付属するエディションを選んで買いたいです。
今は入手難易度・価格ともに優れたグループSNE版があります。これに『ダイヤの乱れ』拡張も付属しますし(ルールはWeb上に公開)、日本マップというオマケ付きです。今買うなら旧版にこだわりがなければこれ一択です!
4.『フィヨルド』
デロンジェのカルカソンヌライクゲームです。六角のタイルを配置してマップを形成する前半ラウンド。前半ラウンドで設置した家を起点に陣取りをし合う後半ラウンドに分かれるゲームです。前後半で異なるゲーム性が特色です。
六角のタイルの2辺接地ルールは『ペリカンベイ』などでも採用されていますが、このルールはかなりタイルの配置制限があります。置ける場所が一択あるいは、全くないシチュエーションも多々あります(笑)。
また前半ラウンドに4回のみ設置可能な家をどのタイミングで建設するかなども悩ましく、なかなか攻略セオリーの言語化の難しい、不思議なプレイ感が特徴です。
ヤフオク高額ゲーム
当時の定価は3000円程度でしたが、今では2倍近くの値段でやり取りされていますね。そもそもモノもあまり出回っていないので、欲しい人は見かけたら是非手に入れておきたいゲームかと思います。持っている人は大切にしましょう。
5.『ゴールドブロイ』
こちらも結構マニアックな作品です。知る人ぞしる作品といった感じです。『金のビール』なんて邦題もついていますね。知名度の割に本格的で面白い、まさに隠れた傑作というのにふさわしいタイトルになっています。
ゲームとしては株式の要素があり、ビール工場、ビアガーデンの経営権を奪い合います。ビール工場はビアガーデンに契約してもらおうと画策します。
ビアガーデンが計上した売り上げをビール工場と折半し、双方の株主に保有割合に応じて分配するという骨太な経営ゲームです。
株は株価の概念などはなく、単純に経営兼と利益の分配に影響を与える要素です。株式の要素は経営側目線の視点という色合いが強いです。
そこにバッティングによる有利不利・陣取りなど様々な要素を加えようとした意欲作です。複雑に感じますが古参ゲーマーは1回はプレイしてみる価値があると思います。
値段は意外と高くない!見かけたら抑えたい作品
ヤフオクでの流通価格もそれほどプレミアムは乗っておらず、また駿河屋で中古の在庫を見かけた時も定価並みかそれ以下でした。欲しい・気になっている人は、見かけたら迷わず入手しておきたいゲームかと思います。
6.『画商』
デロンジュの画商になって絵画の仕入れと販売を行うゲーム。まず真っ先にイメージするのがクニツィアの『モダンアート』のようなゲーム性ですが違います。
ショーマネージャーのようなドラフト方式で絵画を仕入れます。絵画には「国籍」、「年代」、「ジャンル」、「大きさ」、「知名度」の5つのパラメータがあります。
顧客カードはそのパラメータのいくつかの要素を要求しており、各プレイヤーがその顧客の期待を最も満たすであろう絵画タイルをプレイしていきます。
最も条件に合致するカードを提示したプレイヤーが絵画を売りぬき、顧客カードに描かれた金額を売上金として手にします。最もお金を稼いだ人が勝利するというゲームです。
難点はドイツ語バリバリの言語依存
顧客カードは完全にテクストカードの上、完全にドイツ語です。翻訳は必須です。僕は有志のアップロードしてくれた英語訳から、日本語シールを自作して貼って遊びました(掲載の写真をよく見ればわかります)。
過去に友人に共有したのが幸いしてデータを発見したので、機会があれば公開も検討したいと思います。
7.『マニラ』
最後にデロンジェの賭けゲームの『マニラ』を紹介して終わりにします。コンポーネントで評判のツオッホ社から発売されたゲームで、こちらもまた根強い人気のある作品といえます。
一度だけプレイしたことがありますが、船が無事に航海を終えられるかにベットする賭けゲームです。航海の成否以外にも賭けの方式もいろいろあります。
保険・海賊などもあり、保険は直ちにリターンを受け取れる変わりに、船が座礁したらお金を払う。海賊は特定マスで船を待ち伏せ、乗っ取るという大胆な賭け方式になっております。ベットの方式は多彩です。
いろいろな賭けの手法が用意されており、総合的ギャンブルゲームでテーマも活かした1つの完成形といっていい作品です。
自分的お勧めゲーム
筆者手持ちの写真を掲載した『ゴールドブロイ』除く4作は強くお勧めできます。単純に『ゴールドブロイ』は再所有後にプレイはまだしていないだけです。現在の価値観での再プレイして評価してみたいと思っていますが、なかなか機会を見出せません。
『画商』はやや粗削りなゲーム性に思いますね。ただ一度はプレイしてみる価値はあります。デロンジェらしさを感じられる作品なのは間違いありません。
あとは『マニラ』はどうしても『メンバーズオンリー』が比較対象に入ってしまい、正当な評価ができそうにないです。ダイスゲームはあまり好きではないので、相当なバイアスがかかった評価かと思います。
ここで取り上げなかった『ザンジバル』は『ヘラス』と『決算日』、『ドスリオス』なんかがありますね。『ドスリオス』は海外では投げ売られているので、気になる方は輸入してみると良いかもです(2~3人で遊ぶと面白いです)。
今は『ビッグシティ』と『トランスアメリカ&ジャパン』作を除いてほとんどが絶版です。入手からして困難で、すべて試すのは相当根気を持って蒐集するか、機会に恵まれないと難しいです。
微妙なのは『コンテナ』です。かなり絶版の兆しが高まっていますね。見かけたら入手しておきたいですね。
50歳の若さにしてこの世を去る
テーマを活かしながら独特のゲームデザインでファンを獲得してきたデロンジェですが、2007年発表の『コンテナ』を最後に、50歳の若さでこの世を去ってしまいます。
テーマを決して二の次にしない、独特なゲームデザインは生きていたらもっと意欲的で面白い作品をデザインしたことを確信させてくれるデザイナーです。非常に惜しいデザイナーを亡くしたなと思います。
今日のまとめ
デロンジェの7作品をざっくり解説しました。
10ぐらいは彼の作品を遊びました。現行流通品2作は買いだと思います。
『コンテナ』は絶版の匂いが漂います。欲しい人は抑えておきましょう。
『ゴールドブロイ』はいつか再プレイしてみたい。
『画商』のルールとシールは行けそうならどっかで公開するかもです。
彼は『コンテナ』を最後にこの世を去りました。
以上です。長々と読んで下さり、ありがとうございました。