福本漫画の簡素レビュー 前編
今日は『カイジ』が映画化されたことで話題が集まっているであろう、福本漫画について僕が読んだことがある作品を簡単にレビューしていきたいと思います。
ただ福本漫画との出会いが短大時代(2000年初頭)ぐらいで2010年代ぐらいからの新連載の作品はほとんど読めていません。なので古めの作品のレビューが中心です。
あとレビューする作品数の都合、長くなりすぎるので記事を2つに分割したいと思います。なので今回は前編とし4つ紹介させていただこうと思います。
わかりやすく掻い摘んで読みたい方に点数評価を5点満点で行っております。手に取る際の参考にしていただければと思います。
【目次】
福本漫画に共通するテーマ
おおよそに分けるとこんな感じです。
1.何かを通じて人生の大事な決断にたとえる内容が多い。
2.主人公は基本的に尊い道徳観を持つ人間であることが多い。
3.本質をえぐり人生観に影響を与えるレベルの名言が登場する。
こういう内容に興味がある人は是非今から紹介する作品は全部読むぐらいで良いと思います(笑)。僕は実際そうしました。短大時代に福本作品に出会いましたが、当記事で挙げる作品は全部読んで良いんじゃないでしょうかと思います。
福本漫画、偉人名言集のサイトこの2つは18~20歳の自分に凄い影響を与えました。僕の人生を変えた本といっても過言ではないかもしれません。
それではレビューに移りたいと思います。
賭博黙示録カイジ
僕個人の評価:カイジシリーズの原点にしてシリーズ至高(4点)。
長く続くカイジシリーズの原点でありシリーズ至高の作品です。最初の限定ジャンケンからかなり飛ばしており面白いです。
特にいきなり窮地に陥って這い上がっていく様が非常に物語としても面白く、諦めないことの大切さを説くメッセージ性も強い内容になっています。
黙示録だけでも名悪役利根川なども登場し、カイジの基礎知識と呼んでいいあたりはこの賭博黙示録だけでも十分に抑えられます。「金は命より重い」、「質問すれば答えが返ってくるのか当たり前か?」等など、利根川の演説はどれも鋭く本質をとらえており、聞くものとしては耳が痛い思いがあります。
ギャンブルを通じて人生に通じる名言をたくさん飛ばすだけでなく心理的駆け引きの描写も面白く、ギャンブル漫画といえばコレといって差支えないでしょう。
カイジの人間性も面白くて基本はありがちでダメなところが目立つ若者なのですが、ことギャンブルで窮地に陥ると凄い才能を発揮するようになります。
尊敬できないところもあるんですが、善い人をほうっておけないところや損得を無視して人を助けるあたりは絶妙なぐあいに憎めない人物になっており、妙な人間味があって良いですね。
この人の好さが災いするのでカイジのこの性格のおかげで今日も物語が続いているのかもしれません(笑)。
黙示録は1勝負4巻ぐらいで終わっている印象もあり、全13巻で2種類のギャンブルしかしない破壊録に比べれば短くスッキリしていると言えるでしょう。
カイジを知りたければ順番的にもシリーズ原点の黙示録からですし、お勧め度の観点からもこれですね。ただその後の破壊録については、また別の回でお話します。
天 天和通りの快男児
僕個人の評価:名キャラクター赤木しげるを生み出した作品で間違いなく名作(5点)
人気キャラクター「アカギ」こと「赤木しげる」を生み出した作品で、たぶん主人公より有名かもなぐらいインパクトのある登場人物として描かれています。
漫画の内容は初期の人情路線を1巻は貫いております。麻雀パートはただのイカサマで勝つだけと思う人が多いと思います。ですが、騙されたと思って2巻までは読んでください。
一転して本格麻雀漫画にシフトするだけでなく、人気キャラクター「赤木しげる」が登場するので1巻は別物だと割り切るのもアリかもしれません。この「アカギ」は名言製造機かってぐらいに彼のセリフは名言ばかりです。
麻雀漫画ですが、麻雀の重要な場面での選択を人生での選択のような例えたり、麻雀への理解がそれほど深くなくても楽しめるのが特色です。
よく問題になる福本漫画特有の展開の遅さですが、当作品は作品の大半が東西戦という大きな大会をテーマにしたものになっていますが、1勝負1勝負はそれほど長くないのが良いです。
クリア麻雀、8人麻雀などの特殊ルールの麻雀がたくさん登場するので延々麻雀をしているだけみたいには感じにくいのも良いですね。中でも面白そうなのは2人麻雀でしょう。よく考えたなと思います。
あと最終3巻は全く麻雀をしないことでも有名です。赤木しげるとの対話形式がメインで彼の人生観・価値観を説く内容になっています。これだけでもとても面白いので是非読んでみてほしいと思います。
アカギ 闇に降り立った天才
僕個人の評価:前半部は優秀。鷲巣麻雀は賛否両論(3.5点)
続いて紹介するのは『天』のスピンオフ作品といっても良い『アカギ』です。とはいえ、『天』の登場人物が登場するわけでもなく、作品の知識がないと楽しめないわけではないので、単純に1つの作品として楽しめるようになっています。
しいて言うなら天で老アカギが登場するので、『天』を知っている人目線でアカギは絶対に死なないことだけがわかっていることぐらいです(笑)。
こちらも麻雀漫画です。こっちの方が延々麻雀している感じは強いです。悪名高い「鷲巣麻雀」は有名ですね。
「鷲巣麻雀やっている間に『NARUTO』が連載開始して終了した」とかいう伝説があるぐらいには延々続きました。もうね。何年間やっていたんだろうってぐらいに。完結しましたが、全36巻中30巻近くが鷲巣麻雀が遅々と連載されています。
ですが、そこを除く6巻ぐらいまでは勝負のテンポも良く。浦部、市川戦ではアカギの非凡さがいかんなく発揮されており面白いです。
僕個人としてはアカギの魅力が知りたいなら『天』の方がテンポが良く、『天』の方が麻雀を分からない人も楽しめると思います。なのでまずは『天』を読み「赤木しげる」を気に入った人が読むぐらいでちょうど良いかなと思います。
無頼伝 涯
僕個人の評価:少年誌という枠の中では頑張ったと思う。問題作だが佳作(2.5点)
無頼な少年「工藤涯」が冤罪で逮捕され人間学園という施設に収監され、脱出し冤罪を晴らすストーリーです。凄まじいストーリーですが、少年向けに掛かれた作品というのだから驚きです。どちらかというとやや問題作感あります。
主人公涯は天涯孤独に近い身で、自分の力を頼りに生きてきている学生という設定ですが、涯の人生観は見ていてなかなか面白いです。
人間学園という施設は主に金持ちの罪を擦り付けられた人が習慣される施設なのですが、人権無視の非人道的教育がなされている場所で容赦なく暴行が行われるし、本作の大問題といっていい「犬の部屋」などとんでもない設定がある施設です。
現代日本でこんなことをしている施設があるとは思えませんが、どこか探せばありそうなのが日本の闇って感じがしますね。おお、怖い。
少年向けでこの内容というのが無理があったのか全5巻で完結しており、それはそれですっきりと収まっています。一応、伏線は概ね回収しますし無理な打ち切りって感じの終わり方ではないのは好感触です。悪くない作品だと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか?気になる作品があれば是非購入してみるか、漫画喫茶などで手に取っていただければと思います。
次回は後編として黎明期の名作『銀と金』やカイジ続編の『賭博破戒録 カイジ』などをレビューしていこうと思います。そちらもよろしければ読んでいただければ嬉しいです。
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