書評『ファクトフルネス』の犯人捜し本能について
今日は大ベストセラー本の『ファクトフルネス 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』を概ね読み終わりましたので、その感想などについて書こうと思います。
この本ではサブタイトルにあるように人間の陥りやすいバイアス(偏って受け取りやすい考え方)ついて解説しております。そこから生じる勘違いの危険性、正しく情報を捉えるために抑えておくべき要点みたいなものがまとめてあり、非常に面白い本です。
つかみのチンパンジークイズ
中でも最初のつかみある3択問題が非常に面白く、これはネタバレしてしまいますが非常に現代人は誤答しやすいものが多く、ランダムに正解を選ぶのよりも正答率が低くなる傾向があるみたいです(3択で正答率33%以下が殆ど)。
正答率33%を切ることを、回答が描かれたバナナをランダムに選ぶチンパンジーに負けるとし、本著ではこの3択クイズをチンパンジークイズと表現しています。
しかも、この正答率でチンパンジーに負けるのは、頭の良い人だろうが有識者だろうがほとんど関係なくという驚愕のデータ付きです。
10の本能とは?
10の本能はざっくり解説していきますと、
1.分断本能 世界は分断されているという思い込み
2.ネガティブ本能 世界はどんどん悪くなっていっているという思い込み
3.直線本能 世界の人口はひたすら増え続けるという思い込み
4.恐怖本能 危険でないことを恐ろしいと考えてしまう思い込み
5.過大視本能 目の前の数字が一番重要だという思い込み
6.パターン化本能 1つの例がすべてに当てはまるという思い込み
7.宿命本能 すべてはあらかじめ決まっているという思い込み
8.単純化本能 世界は1つの切り口で理解できるという思い込み
9.犯人捜し本能 誰かを攻めれば物事は解決するという思い込み
10.焦り本能 今すぐ手を打たないと大変なことになるという思い込み
この10個の本能的にやってしまいがちな情報のうがった捉え方について解説してあります。詳細はこの書籍を読んでもらうのが一番なので割愛しますが、中でも僕の中で一番危険だと思う本能である「犯人捜し本能」について少しお話したいと思います。
犯人探し本能とは
結論からいうと、ある問題について悪者をでっち上げます。そして、その人にすべての責任を転嫁してしまい思考停止してしまう考え方といってよいと思います。
人間は本質的に自己の責任を認めにくく、誰かのせいにしたい生き物であることだと僕は思います。
僕が子供の頃はよくTVゲームでの失敗を「誰かかや何かに集中が妨げられたから」や「敵キャラの動きが理不尽だから」とか、とかく原因を自分の外に求めてしまう悪癖がありました。これもまた犯人捜し本能のなしたものと言えなくもないです。
どんな人やグループが攻撃されやすいのか?
中でも本作中で悪者扱いされやすいのは「あくどいビジネスマン」、「ジャーナリスト」、「ガイジン」の3つが挙げられており、我が国でも例外でないと思います。前者2つは概ね思い当たると思うので割愛します。「ガイジン」については非常に根が深い問題だと思うので少しお話したいと思います。
「ガイジン」は国の景気や治安が悪化すれば過激な保守派の人に攻撃されやすく浦沢直樹さんの漫画『MASTERキートン』では過激派が外国人に雇用を奪われていると思い込み過激な行動をする人達が出てきます。
過激な犯人捜し本能の例の1つ。『MASTERキートン』より引用
この国でも在日韓国人などに関する問題は根は深くあえてこの問題を深堀するするつもりはありませんが、もしかしたら犯人捜し本能によるものかもしれませんね。
このように犯人捜し本能は極めて危険で、特定のグループや個人を悪者にして過激な行動に出る者もあらわれます。さらにはこの行動を正義の鉄槌だと思い込むと残酷さや非情さに歯止めがかからなくなります。犯人捜し本能と正義の感情の組み合わせはきわめて危険な組み合わせだと思います。
さらに相手が社会的弱者ならどうなるかは学校などのいじめ問題を見ればおおよそ予想がつくと思います。
責任を転嫁することで思考停止し、問題の根本的解決から遠のく
犯人捜し本能のもう1ついけないと思う点は問題の根本の原因を分析することを止めて思考停止することです。これの一番の問題は本当の原因を見失い根本的解決から大きく遠のくことです。
車などでよく事故が起こるところでは、何か根本的な問題が潜んでおることが多いように思います。運転者各個人に注意を促すだけでは事故は大きくは減らないと僕は思います。なぜなら個人の注意力には大きな個人差があるからです。
対策としては構造的に事故が起こりにくくなるようミラーを設置するとか道路そのものをスピードを出しにくい構造にしてしまうなど、原因をしっかり見据えた上での根本的対策が一番だと思います。
つまり危険な行動を物理的にできなくしてしまうことが根本的な事故の防止につながると思っています。
要するに僕が思う問題解決のサイクルは世の中でいうPDCAサイクルと同じで
P:原因をしっかり分析し、事故や不注意が構造上起こりにくくなる対策を練る
D:その対策措置の導入。
C:対策が有効であるのかの検証と評価。
A:さらなる構造的改善を考える。
この流れを踏んでいく中で問題は少しずつ減少していくと思っていますが、犯人捜し本能は最初のP(Plan)のところで躓くどころか、問題解決のサイクルにすら入れないと思います。
この問題解決の好循環を生むことなく思考停止してしまうのは大変勿体ないと思います。
結論、犯人捜し本能に抗うにはどうすればよいのか
1.犯人ではなく問題の根本的原因に目を向ける
2.その逆の成功も誰かの支援や社会構造のおかげであると考える
概ねこの2点に注意しておけば犯人捜し本能に取りつかれにくくなり、ゆくゆくは克服していけるのではないかと思います。
中でも自分が原因の一端である場合はそれを認めるのは辛いことかもしれません。ですが、必要な時はそれを受け入れていかなければ自己の進歩、社会の進歩もあり得ません。
2に関しては要は概ね話しつくした1の内容を成功したときの場合の話です。成功時は自己の努力や功労やアイデアを過大評価してしまいがちで、これまた目が曇りやすいです。これもまた人間の持つ弱さの1つだと思います。
結局は人間の持つ根本的な心の弱さとの闘いがファクトフルネスな考え方に必要不可欠なのかもしれませんね。
すぐに実践していくのは難しいので少しずつでも自分の責任や他者の功績を認め、よりファクトフルネスな考え方を手にしていきたいものですね!
ファクトフルネスを身につけるとゲームや仕事や投資あらゆることに応用できると思います。素晴らしい本なので何かの分野で上達したい人には超お勧めです!
以上です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
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